Vol. 4 ビッグデーター 

NSA(米国家安全保障局)が密かに個人情報を収集していたというスノーデン元CIA(米情報局)のリークは西側諸国間に微妙な疑心暗鬼を募らせさらに米国とロシアとの外交関係にも影を落とし、さらにその暴露報道をめぐって国家とメディアの対立が激化するなど様々な波紋を広げている。そんな中、日本では「ソニーがフェリカ(非接触ICカード技術)の利用データをもとにビッグデータ分析事業に参入」「NTTデータがオラクルと提携してツイッターの分析事業に乗り出す」といったニュース(日経新聞)が相次いでいる。単純にビッグデータの利用ビジネスが次代の成長産業になるという期待感であふれている。

 記事によればいずれの企業もこれまで単にスムーズに利用できるように管理していた情報データが実は巨大な宝の山(ビッグデータ)であることに気づき、しかも他社よりも早く圧倒的に多くの情報を収集できる優位な立場にあることからそのデータを旨く利用しようと乗り出すようだ。例えば購買履歴情報などを分析し、新製品の開発などのデータとして提供すれば新ビジネスが立ち上げられると考えている。日経によればビッグデータ市場は2020年に1兆円規模に拡大するという。

 もちもん不特定多数の人の利用データを特定企業が再利用することについては個人情報保護の観点から抵抗や論議はあるという。だが問題はそこではないのではないか。デジタルデータはこのような形でいつでも収集分析することが技術的にはできるのだということである。それを企業がやるか国家がやるかの違いだけだ。デジタル時代の危うさを認識しておいた方がいいように思う。とはいえこの時代自己防衛の方法があるのだろうか。


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。