Vol. 3 首相の中東歴訪

 安倍首相は如何にもタイミングが悪いときに中東の旅に出ることになったものだ。春のUAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビアに続いての中東訪問ということで、中東外交の仕上げということだろうが、ご存知のようにその後エジプト情勢が急展開、内乱の危機すらささやかれる状況である。このエジプトの現状にどのような立場をとるかがいまの周辺イスラム諸国のみならず西側諸国にとっても大きな問題である。日本はあくまで中立的な立場で騒乱回避を表明することに終始するだろうが、今回訪問するバーレーン、クウェートとカタールの対エジプト姿勢が異なり、相互関係も微妙なのだ。

 クウェートとバーレーンは先のエジプトの軍事クーデターを支持し、カタールはムスリム同胞団の民主化を支援している。エジプトの軍事クーデターを支持する国の最大の理由はイスラム原理主義を語りながらの民主化の波が自国に波及することを恐れるということにある。しかしカタールは早くからイランとの関係を持ったり、シリアの反体制派を支援したりして周辺国を刺激している。それゆえサウジアラビアやUAEを含めた周辺国との関係も微妙だ。

 「アラブの春」の評価も定まらず不安定化する中東情勢のなかで全世界がいま踏み絵を迫られているようにみえる。今回の訪問には多くの財界人も同行するという。しかし経済やビジネスということだけで中東諸国と付き合える時代はとうに終わっているようにみえる。

 


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。