Vol.17  ガイジン 

 海外から日本に帰って来ると「日本には同じような顔をした人しかいないのだな」ということを強く感じる。欧州諸国でもそうだが、特に米国NYあたりにいるといろいろな人種の、いろいろな職種の、いろいろな生き方、考え方の人たちがその国の社会をつくっていることが当たり前であり時にそこにいる自分までもがその国の人に間違われることさえある。顔かたちは国籍と全く関係ないのだ。そんな世界からみると良し悪しは別にして日本は特別なのだなとつくづく思う。

 そんな日本で移民問題が本格的に議論の俎上にあげられることになりそうである。50年後の日本を見据えて解決すべき課題を討議している経済財政諮問会議がこのほど現状の国力を保つためには1億人規模の人口を維持する必要があり、そのためには年間20万人程度の移民受け入が必要であるとの「試算」を発表したのだ。シミュレーションとはいえ移民受け入れをここまで具体的に正面から取り上げたのはおそらく初めてではないか。その流れからすれば年内に出すことになっている報告書では何らかの形で移民受け入れの提言が盛り込まれる可能性は高い。もちろん提言がそのまますぐに政策に反映することはないが、正式提案となれば、政府も何らかの判断を迫られることになるのは間違いない。

 このまま少子高齢化が進めば日本の人口は30数年後には一億人を割り込むことは確実という予測や経済社会のグローバル化という現実を前にして日本も移民受け入れに舵をきることになるのかどうか、分からない。しかしいずれにしても今の移民受け入れ議論があまりに日本の都合だけで自分たちの利益のみを考える形で進められていることが気にかかる。日本はこれまで難民や亡命、単純労働者などの受け入れは拒否し、日本人労働者の確保が難しい建設業などの限られた職種にのみ「技能実習」という名目で外国人をいわば派遣労働者のように受け入れるという政策をとってきた。できればその上で高い専門性や技能を持つ人を移民として選別的に受け入れたいというのだ。余りに身勝手で都合のいい話ではないか。そういえば外国人は日本の「ガイジン」という言葉に強く差別的な感じを抱くという。日本人のもつ「ガイジン」意識が根本的に変わらない限り日本に移民問題を論議する資格はないように思われる。


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。