Vol. 7 企業減税 

  安倍首相が「決まっていた」消費税の増税実施を前に、如何にも国民のことを考えていますというような気を持たせる発言をしていたと思ったら、今度は合わせて実施するという法人税の減税についてまた何やら言い出している。減税分を賃上げなどに回すよう企業に要請することを検討しているというのだ。 企業優遇批判をかわそうという狙いと経済景気対策だというのだが、このような話を首相以下主要経済関係閣僚の会議でしているというのでさらに驚いた。しかも記事(朝日新聞)によれば企業に減税分を何に使ったか公表の義務化も考えているという話も出たというから思わずのけぞった。そんなことが本当に可能と思っているのだろうか。主要閣僚が集まってそんな稚拙な論議をしていると思うと、この人というかこの政府は本当に大丈夫だろうかと思わず言いたくなる。

以前、消費税上げを決めた時、小売店に対して「消費税分3%を値引き」とか「増税に負けない」とかいったセールスを禁止するとの通達を出すとか出さないとかの論議もあった。結局は立ち消えになったようだが、今回の企業への要請か義務化も最初から筋が通る話ではない。あの麻生副総理でさえ「日本は共産国ではないので政府に言われて賃上げする企業はない」と言っているようだから分かっているとは思うのだが、なぜこうも同じようなことを繰り返すのだろう。単純に弱き国民への配慮や人気取りではないだろう。

 そういえば憲法改正を巡る論議の中で指摘されるように、この人は変に国のためとか公共のためと権利より義務の精神論を強調している。この人、政府政権はすべてにわたって指導者的立場にあると思っている、あるいは思いたいのかもしれない。考えるのは政権、国民、企業は言う通りにということがどこかにあるとすれば笑っていられる話ではない。 


小西洋也(こにし・ひろや)

1947(昭和22)年生まれ。東京都出身。

1966(昭和41)年、海城高校卒。

1970(昭和45)年上智大学卒、日経新聞記者。その後テレビ東京、BSジャパンで報道に携わる。

現在は自由業。海原会副会長、海原メディア会会長。